井上

半分ぐらいまで読んだ時に、崩壊について書いてある話が多いのかなと思いました。話の最後で登場人物に大きな状況の変化(悪いこと)が起こります。ただし変化後のことはあまり書かれていません。だから現状の崩壊がポイントなのかと思ったのです。そうしたら後書きに生死に関して書かれて短編を集めたと書いてありました。
ただ確かに後半の「補陀落渡海記」や「鬼の話」は生死を考えた話に間違いないと思いますが、前半の「雷雨」や「姨捨」はもう少し面白い変な小説だと思いました。死や崩壊の前兆を意識しているのですが、嫌なばかりではなくて仕方ないという感じです。ちょっとさわやかな気もしました。私は井上靖をほとんど読んでいないのですが、前半の方が井上靖っぽい気がします。