ひかりごけ

私としては武田泰淳に興味があるのに、三島由紀夫ばかり読んでてアレなので読みました。短編集で4作あります。「ひかりごけ」、「異形の者」は違うかもしれないですけど、「流人の島にて」、「海肌の匂い」と長編の「富士」(id:eeeeee:20050825:1124983005)を読んで思ったことです。
この3作は主人公とか登場人物とかの人間らしさについて書いてあるのかなと思いました。「人間らしさ」というのは「心が優しい」とかっていうことではなくて「人並みの暮らしができているか」という感じのことです。あと「社会の中で重視されているか」みたいな部分も含まれてくると思います。救い(自分が救われているか)ということには相対的な、人よりどうであるか、という部分があると思います。泰淳の小説の中で人物はそういうことを気にしているし、人物自身が気にしていなくても他の人物がそうみていました。なので「人間らしさ」と立場、肩書きとか「人に重視されているか」も結びついてくるのではないでしょうか。解説には神に近づいてどうとか書いてあるので全然違うかもしれません。
特に「富士」を読んでいたときのことなのですが、昔やっていたドラマで「深く潜れ」のことを思い出しました。鈴木あみが主演をしていたやつです。このドラマは鈴木あみを含めた7人の人物(普通の人生をドロップアウトして現状に多少なりの不満をもっている)が旅行をしたりする話です。7人は前世で同士であったという繋がりがあるのですが、今生ではしっかりしたものではありません。話の最終回で7人が鈴木あみの母の前で会食をするシーンがあります。私はこのシーンがとても好きでした。7人が自分達の繋がりと、他人(あみの母)との違いを覚えて、一瞬だけのことですが確実な救いを手に入れているように見えたからです。

ひかりごけ (新潮文庫)

ひかりごけ (新潮文庫)